ドイツリスク「夢見る政治」が引き起こす混乱
ユーロ危機を招いたギリシャ支援における頑なな姿勢、ロシアや中国への接近と米国離れ、学者やメディアの誤解に基づく日本批判――EUのリーダーであり、GDP世界第4位の大国が、世界にとって、そして日本にとって、最大のリスクになりつつある。ドイツは変質したのか? それとも、ドイツに内在していた何かが噴き出したのか?
長年ドイツで取材活動を行ってきた筆者は、「夢見る人」というドイツとドイツ人に対する定義が、この問題を解く鍵になるという。
エネルギー転換、ユーロ危機、ロシア・中国という二つの東方世界への接近――この3つのテーマから、ドイツの危うさの正体を突き止め、根強い「ドイツ見習え論」に警鐘を鳴らす。
目次
はじめに 危うい大国ドイツ――夢見る政治が引き起こす混乱
第1章 偏向したフクシマ原発事故報道
1 グロテスクだったドイツメディア
2 高まる日本社会への批判
3 原発を倫理問題として扱うドイツ
第2章 隘路に陥ったエネルギー転換
1 原発推進を掲げる政治勢力は存在しない
2 急速な自然エネルギーの普及
3 不安定化する電力需給システム
4 ドイツ人ならやり遂げる、という幻想
第3章 ユーロがパンドラの箱をあけた
1 それはギリシャから始まった
2 「戦後ドイツ」へのルサンチマン
3 夢を諦めない人々
4 綱渡りを強いられるメルケル
5 「夢見るドイツ」がユーロを生み出した
第3章 「プーチン理解者」の登場
1 緊密化する対ロシア関係
2 「東への夢」の対象としてのロシア、中国
第5章 中国に共鳴するドイツの歴史観
1 歴史問題での攻勢
2 歴史認識がなぜ中国に傾くのか
おわりに ロマン主義思想の投げかける長い影
著者紹介
三好範英(みよしのりひで)
1959年東京都生まれ。東京大学教養学部相関社会科学分科卒。82年、読売新聞入社。90~93年、バンコク、プノンペン特派員。97~2001年、06~08年、09~13年、ベルリン特派員。現在、編集委員。著書に『特派員報告カンボジアPKO 地域紛争解決と国連』『戦後の「タブー」を清算するドイツ』(以上、亜紀書房)、『蘇る「国家」と「歴史」ポスト冷戦20年の欧州』(芙蓉書房出版)。