シタイハキョウモナイテイル
2014年12月11日発売
定価:814円(税込み)
ISBN 978-4-334-03833-5
光文社新書
判型:新書判ソフト
死体は今日も泣いている日本の「死因」はウソだらけ
病死に見えて事故死かもしれない、自殺に見せかけた他殺かもしれない、急増する危険ドラッグや過労が原因の死かもしれない。それなのに日本では、犯罪性が疑われる多くの死体が、解剖されることなく荼毘に付されている。ずさんな検視による犯罪見逃しや冤罪も後を絶たない。
また、まかり通る「死因のウソ」は、私たち生きている人間に悪影響を及ぼす。伝染病の発見が遅れ、虐待も見逃され、補償金や生命保険料の支払額にも誤りが生じる――。
解剖、CT検査、DNA鑑定、組織鑑定など法医学者の仕事に迫りつつ、知られざる社会問題をあぶり出す。
目次
第1章 検死はこうして行われる
1-1 法医学者は何を見ているのか
1-2 死体が教えてくれること
1-3 あっさり下された「病死」診断が招いた連続殺人
――首都圏連続不審死・婚活詐欺(木嶋香苗)事件
第2章 死因は誰が決めるのか
2-1 「検死」と「検視」はどう違う?
2-2 1枚の書類が死因を変える
第3章 あぶなすぎる検視・検死の現状
3-1 「とりあえず心不全にしてしまえ」
――21人の死者を生んだパロマガス湯沸かし器事件
3-2 CTだけでは出血源を判断できず、外傷を見逃す
――肝臓がん破裂の「病死」にされた男性
3-3 アザだらけの遺体は、「通常の稽古で亡くなった」もの?
――時津風部屋力士暴行死事件
第4章 先進諸国があきれる日本の死因究明制度
4-1 日本の死因究明システムは“ガラパゴス”
4-2 先進諸国はこんなにすごい
第5章 情報開示と遺族感情をめぐる課題
5-1 死者の尊厳と遺族の気持ちの問題
5-2 犯罪や冤罪の見逃しの問題
5-3 被災地での身元確認、そして――
著者紹介
岩瀬博太郎(いわせひろたろう)
1967年千葉県生まれ。千葉大学大学院教授、解剖医。東京大学医学部卒業、同大学法医学教室を経て2003年より現職。2014年より東京大学法医学講座も兼務。日本法医学会理事。内閣府「死因究明等推進計画検討会」委員。年間300体以上の司法解剖を行いながら、警察庁・厚生労働省等の政府機関に、死因究明制度改革の必要性を訴えかけている。著書に『焼かれる前に語れ』『法医学者、死者と語る』(ともにWAVE出版)がある。