天下取
「動かざる」……永禄十一年(一五六八)、武田信玄の正室・三条は、北条家に嫁いだ娘の春姫を出迎えるため、信玄の軍勢に同行していた。北条家が、武田家と敵対する今川家の味方についたため、春姫は我が子を残し、無理やり戻らされてしまったのだが……。
「天下取」……天正十年(一五八二)、武田家滅亡後の甲州から武蔵国八王子に逃れて来た松姫の元に、織田信長の嫡男・信忠の家士が訪ねてくる。かつて松姫と仮祝言を交わしていた信忠は、松姫を気にかけ、自身の滞在する京へ招こうとするのだが……。
乱世の運命に呑まれながらも、力強く生きる女たちを描いた六つの短編集。