言葉という大海原を航海するための船。
言葉の海を照らす灯台の明かり。
普通の人間。食べて、泣いて、笑って、恋をして。
書店で働く人。人々と書物との出会いを演出する。 書籍、雑誌を問わず、書物に深い愛情を注ぎ、格別の思い入れで売り伸ばす人。腰を痛めやすい。

玄武書房に勤める馬締光也。 営業部では変人として持て余されていたが、 人とは違う視点で言葉を捉える馬締は、 辞書編集部に迎えられる。新しい辞書『大渡海』を編む仲間として。

定年間近のベテラン編集者、日本語研究に人生を捧げる老学者、 徐々に辞書に愛情を持ち始めるチャラ男、そして出会った運命の女性。

個性的な面々の中で、馬締は辞書の世界に没頭する。 言葉という絆を得て、彼らの人生が優しく編み上げられていく――。

しかし、問題が山積みの辞書編集部。果たして『大渡海』は完成するのか――。

一九七六年生まれ。二〇〇〇年『格闘するものに○』でデビュー。二〇〇六年『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞受賞。小説に『風が強く吹いている』『仏果を得ず』『神去なあなあ日常』『木暮荘物語』など、エッセイに『悶絶スパイラル』『あやつられ文学鑑賞』『ふむふむ 教えて、お仕事!』など著作多数。