エイゴヒエラルキー
2024年5月15日発売
定価:990円(税込み)
ISBN 978-4-334-10325-5
光文社新書
判型:新書判ソフト
英語ヒエラルキーグローバル人材教育を受けた学生はなぜ不安なのか
急速なグローバル化に対応すべく、政府は高等教育でEMIプログラム(母語が英語でない地域で英語で教科を教えるプログラム)の設置を進めている。2021年度では四年制大学の41%が英語による授業を実施、英語による授業のみで卒業できる学部は88にのぼる。だがこのEMI教育を受け留学を経て卒業した学生の中に、母語である日本語の不安を覚える人が現れている。英語能力による明確なヒエラルキーの中で、日本語だけでなく様々なことに自信を失っている。またグローバル人材として就職した先では、旧来の企業風土への違和感と幻滅も覚えている。本書では卒業生への聞き取りを基に、グローバル人材育成教育の内実を示し、EMIの実施に一石を投じる。第Ⅱ部で指導教員が、言語習得の臨界期以降の外国語教育に付随する問題を解説。複数言語話者の葛藤をコントロールする方法を考える。
目次
Ⅰ EMI教育と学生の不安 佐々木テレサ
第1章 いま、なぜ「日本語の不安」なのか?
第2章 グローバル人材教育とEMIの現状
第3章 やっぱりみんな不安だった
――経験者の語りから見る英語ヒエラルキー
補論 帰国子女・みずきの経験と私の経験
第4章 学生をつぶす日本の英語教育
Ⅱ 解説 苦しみと不安の正体
――複数言語使用者への道 福島青史
1.本書の意義
2.本書の魅力、方法
3.複数言語使用者への道と「不安な日本語」の正体
4.EMI教育への提言
5.複数言語話者のこれから
著者紹介
佐々木テレサ(ささきてれさ)
1998年東京都生まれ。2021年早稲田大学国際教養学部卒業、2023年早稲田大学大学院日本語教育研究科修士課程修了。専門は日本語教育学、言語不安、アイデンティティ等。現在、外資系企業勤務。早稲田大学在学中にデンマーク コペンハーゲン大学に留学。
福島青史(ふくしませいじ)
1967年鳥取県米子市生まれ。早稲田大学大学院日本語教育研究科教授。JICA、国際交流基金の派遣により海外6カ国で日本語教育に従事した後、現職。専門は日本語教育学、言語政策、言語教育政策。近著に『「日系」をめぐることばと文化』『複数の言語で生きて死ぬ』(共に共著、くろしお出版)がある。