メルケルと右傾化するドイツ
英国のEU離脱、トランプ大統領誕生、そして2017年9月のドイツ総選挙における右派政党(AfD)の躍進――いずれの危機にも深く関わってきたのがメルケルだった。危機解決のために尽力する姿が印象深いが、実はいずれにおいてもメルケルの政策こそが、危機を醸成し促進することに関わっていた。
本書では、先の選挙で4選を確実にしたメルケルの生涯と業績をできるだけ客観的にたどり、その強さの秘密を分析する。同時に、メルケル率いるドイツこそ世界の地殻変動の一つの震源地ではないかという仮説に基づき、論を展開していく。
メルケルは世界の救世主か? それとも破壊者か? 『ドイツリスク』で山本七平賞特別賞を受賞した著者による画期的な論考!
目次
序 章 危機の震源地ドイツ
第1章 共産主義体制の孤島〈幼年、少女時代〉
第2章 雌伏の女性物理学者〈大学、研究者時代〉
第3章 民主化の嵐に突入〈「民主的出発」、副報道官時代〉
第4章 首相への階段〈閣僚、野党指導者時代〉
第5章 危機管理首相〈第1次政権〉
第6章 ギリシャと原発〈第2次政権〉
第7章 世界の救世主か破壊者か〈第3次、4次政権〉
著者紹介
三好範英(みよしのりひで)
1959年東京都生まれ。東京大学教養学部相関社会科学分科卒。82年、読売新聞入社。90~93年、バンコク、プノンペン特派員。97~2001年、06~08年、09~13年、ベルリン特派員。現在、編集委員。著書に『特派員報告 カンボジアPKO 地域紛争解決と国連』『戦後の「タブー」を清算するドイツ』(以上、亜紀書房)、『蘇る「国家」と「歴史」 ポスト冷戦20年の欧州』(芙蓉書房出版)。『ドイツリスク 「夢見る政治」が引き起こす混乱』(光文社新書)で第25回山本七平賞特別賞を受賞。