ビジュツノユウワク
2015年6月17日発売
定価:1,034円(税込み)
ISBN 978-4-334-03864-9
光文社新書
判型:新書判ソフト
〈オールカラー版〉美術の誘惑
美術作品も、人と同じく一期一会で、出会う時期というものがあるにちがいない。私が病気の娘を案じているときに出会ったシャルダンも、娘を供養すべく東北に見に行った供養絵額も、娘の死後の絶望の中で見入った中国の山水画も、みな出会うべきときに出会ったのだと思っている。それらは、二度と同じ心境では見ることができないものだ。 (「エピローグ」より)
美術は、単に優雅な趣味の対象ではなく、社会や文化全般に強く関係する。政治経済と深く関わり、生老病死を彩り、人の欲望や理想を反映する――。西洋でも東洋でも、美術は歴史の局面で重要な役割を果たしてきた。そんな美術の誘惑についての、一期一会の物語。【図版125点収録】
目次
まえがき
プロローグ 美術館の中の男と女
第 1 話 亡き子を描く
第 2 話 供養絵額
第 3 話 子供の肖像
第 4 話 夭折の天才
第 5 話 人生の階段
第 6 話 清貧への憧れ
第 7 話 笑いを描く
第 8 話 食の情景
第 9 話 眠り
第 10 話 巨大なスケール
第 11 話 だまし絵
第 12 話 仮装
第 13 話 釜ヶ崎の表現意欲
第 14 話 刺青
第 15 話 一発屋の栄光
第 16 話 コレクター心理
第 17 話 自己顕示欲
第 18 話 ナルシシズム
第 19 話 ナチスの戦争画
第 20 話 官展と近代のアジア美術
第 21 話 日本の夜景画
第 22 話 折衷主義の栄光と凋落
第 23 話 三島由紀夫
第 24 話 琳派とプリミティヴィスム
第 25 話 白い蝶
エピローグ 美術の誘惑
あとがき
著者紹介
宮下規久朗(みやしたきくろう)
1963年愛知県生まれ。美術史家、神戸大学大学院人文学研究科教授。東京大学文学部卒業、同大学院修了。『カラヴァッジョ――聖性とヴィジョン』(名古屋大学出版会)でサントリー学芸賞などを受賞。他の著書に、『食べる西洋美術史』『ウォーホルの芸術』『<オールカラー版> 欲望の美術史』(以上、光文社新書)、『カラヴァッジョへの旅』(角川選書)、『刺青とヌードの美術史』(日経プレミアシリーズ)、『フェルメールの光とラ・トゥールの焔』(小学館101ビジュアル新書)、『モチーフで読む美術史』(ちくま文庫)など多数。