ナゾトキムラカミハルキ
2007年12月13日発売
定価:924円(税込み)
ISBN 978-4-334-03430-6
光文社新書
判型:新書判ソフト
謎とき村上春樹
謎だらけの小説から誰も見つけてない宝物を探し当てることができるか。
「自己神話化」するテクストを読む。
自己神話化とは、小説それ自身が生と死を繰り返すこと、つまり自己肯定と自己否定とを繰り返すことである。村上春樹文学の主人公「僕」たちも、自己肯定と自己否定の間を揺れ動いている。だから村上春樹文学には長い時間が必要だし、ときに底なしの虚無を感じさせることがあるのではないだろうか。村上春樹は、いつ終わるともしれない一つの大きな物語を書き続けているようだ。
村上春樹のデビュー作『風の歌を聴け』の中に「引用」されている作家「デレク・ハートフィールド」は、こう言っている。
「誰もが知っていることを小説に書いて、いったい何の意味がある?」
僕の呪文が多くの「謎」をといて、「誰も知らないこと」を見せてくれたらいいと思う。(はじめにより一部改変)
目次
はじめに――小説を読むこと
第一章『風の歌を聴け』
第二章『1973年のピンボール』
第三章『羊をめぐる冒険』
第四章『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』
第五章『ノルウェイの森』
あとがき
著者紹介
石原千秋(いしはらちあき)
1955年東京都生まれ。成城大学大学院文学研究科国文学専攻博士課程中退。現在、早稲田大学教育・総合科学学術院教授。専攻は日本近代文学。著書に、『テクストはまちがわない』(筑摩書房)、『『こころ』大人になれなかった先生』(みすず書房)、『漱石と三人の読者』『百年前の私たち』(以上、講談社現代新書)、『教養としての大学受験国語』『国語教科書の思想』(以上、ちくま新書)、『未来形の読書術』(ちくまプリマー新書)、『秘伝 大学受験の国語力』(新潮選書)など多数。