光を届けろ! Challenge of Delivery

Dialogue 02

新しい出版マーケティングの勝ち筋! 「光文社ドクチョー総研」特集

読者起点の「顔が見えるデータ」で
マーケティングの新たな可能性を拓く
光文社の女性誌づくりの根幹であり、読者の本音や隠されたインサイトを丁寧に集める、「読者調査」=「ドクチョー」。
「ドクチョー」を生かし、読者・クライアントそれぞれに寄り添ったマーケティングをおこなうため、昨秋「光文社ドクチョー総研」を開設しました。
光文社ならではの、新たなマーケティングの「勝ち筋」をメンバーのお二人に聞きました。

01

「直接会う」ドクチョーの持つ力

ブランドビジネス部 部長
(光文社ドクチョー総研 所長)

原 さやかHara Sayaka

2003年入社。JJ編集部、2012年よりJJ編集長。
2021年よりCLASSY.事業部長兼統括編集長、2024年よりブランドビジネス部部長。

はじめに、「ドクチョー」について教えてください。

「ドクチョー」は、「読者調査」の略で、光文社では共通言語になっています。女性誌の編集部では、まず新人が入ってくると編集長に「読調してきなさい」と言われるほど、コンテンツづくりの基礎として長年大事にされているものです。基本的には読者さんと一対一で、いま興味を持っていることや悩んでいること、ファッションや美容、さらには人生そのものについて、ジャンルを問わずにいろんなお話をカフェなどで伺います。デジタルがものすごく発達したいまの世の中でも、アナログなことをすることによって、企画の起点やヒントを探していく作業です。一回につき1、2時間くらい時間をかけて、ざっくばらんに、なごやかな雰囲気で読者調査をおこなっています。

読者調査でのお話が企画になった事例をご紹介いただけますか?

「VERY」のKidsメガネの事例を紹介します。

VERY 2024年7月号(撮影/須藤敬一(人物))

VERY 2024年7月号(撮影/須藤敬一(人物))

ただ、「⼩さいのにメガネでかわいそう」と周囲に⾔われ、⼼が揺れるママも少なくありません。けれど弱視は⼩3までに矯正すれば治る可能性が⾼いと言われていて、早期発⾒こそが⼦どもの未来につながります。さらにいまは、医療器具でありながらデザイン性の⾼いブランドも豊富で、“おしゃれで素敵なアイテム”として選ぶ楽しさもあります。VERY編集部は読者調査から出た悩みに寄り添いながら「かわいそうじゃない、むしろ前向きな選択」としてのKidsメガネを発信したのがこの企画です。一見ネガティブに見えるようなものや世の中の事象を、「ドクチョー」から企画をつくることで、前向きに背中を押したり、応援したりできる。これが、光文社が長い歴史の中で変わらずにやってきたお家芸です。

数字で取るアンケートとは異なる、直接会って話を聞くからこその部分はありますか?

もちろんです。定量アンケートでも、事前にある程度の仮説を立てて聞いていけば、同じように「キッズメガネは素敵なもの」というニュアンスの結果を取ることはできると思います。ただ、そのスタートの部分になる仮説は、必ずアナログの読者調査を続けてきている編集者やライターから生まれるもの。お相手のぽろっとこぼれたひと言だったり、表情や仕草だったりから言葉を拾って、雰囲気やたたずまいを含めた本音を探る作業が読者調査です。直接読者とお会いして、場数を踏んだ編集者だからこそ「ここを拾ってみよう」「ここをもう少し深掘りしてみよう」と考えられるようになっていきます。

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雑誌メディアをマーケティングに生かす

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雑誌メディアをマーケティングに生かす

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雑誌メディアをマーケティングに生かす

新たに「ドクチョー総研」を立ち上げるに至った理由を教えてください。

私たちのいるブランドビジネス部は、できてから1年半くらいの新しい部署で、そもそもの大きな目的のひとつは、光文社のメディアに集まってくれている読者やファンの方をまとめる会員事業を進めていくことでした。光文社のIDとして、会員データを全社で貯めるだけではなく、どう活用していくのか、会員の皆さまにどういうメリットやサービスを提供するのか、新しいビジネスにつながる可能性はあるかをずっと考えてきました。

光文社のメディアは、そこに集まってくださる読者やファンの方が非常にアクティブなことが強み。また編集部も、読者調査からあぶり出すインサイトを発信し、悩みや応援、共感してもらうようなコンテンツを言葉とビジュアルで発信することに長けていると思います。ただ、その濃いファンを抱えていることと編集部が培ってきたインサイト発見力はまだまだ世の中に、とくにビジネスサイド向けには伝え切れていないと感じました。だからこそ、その部分に大きな伸びしろがあります。まずは広告出稿の前にクライアントに問い合わせをしていただける窓口を作り、 toB向けのプレスリリースを定期的に発信することで光文社の編集力は雑誌や書籍づくりだけに留まらないことをPRしたいと思ったのが今回のドクチョー総研を考えたきっかけです。そして、その先には、定性と定量のインサイト発見を軸とした新しい形の収益をさらに大きくできる可能性を感じています。マーケットインの考え方で、「光文社はもっとこういうことができます」ということを編集部・営業部側からだけではなく、第三者機関である「ドクチョー総研」からアピールすることで、営業のサポートや新しい手法になっていければと思っています。 株式会社オンワードパーソナルスタイルのオーダースーツブランド『KASHIYAMA』と光文社の女性誌のプロジェクト事例

ブランドビジネス部主任兼メディアビジネス部主任

髙野 眞一郎Takano Shinichiro

2022年入社。広告部、デジタルソリューション部、
メディアビジネス部を経て2024年よりブランドビジネス部。

髙野さんは広告営業を担当するメディアビジネス部も兼務されていますが、光文社が「ドクチョー総研」を立ち上げるということについて、どのように受け止めていましたか?

髙野

私は光文社に2022年6月に中途入社したのですが、前の会社でも前の前の会社でも広告営業やコンテンツの営業をしていました。そのなかで、世の中の広告やプロモーション、マーケティングの世界が大きく変わってきていることを感じていました。デジタル化の影響もありますが、すごく簡単に言えばマスメディアの力が全体的に落ちてしまっている。でも、世の中でコンテンツを求める人は増えていて、コンテンツの価値自体はより高まっているように感じます。たとえば「推し活」という言葉をよく耳にしますが、そのような「好き」というユーザーの高い熱量を集めるコンテンツはさまざまなタイプが存在し、日々生産されている。そしてもちろんそこにはマネタイズの可能性があります。

私は自分のキャリアではこれまで出版業界に関わってきていなかったので、出版社に入って強く感じたのが、「好きを集める力」がしっかりあるな、ということです。ブランドビジネス部が立ち上げられた際に、マーケットが変わっていくなかで光文社のコアになるバリューは何かと考えたとき、それは「好きを集める力」であり、その根底にあるのが読者から丁寧に話を聞く「読者調査=ドクチョー」だ、という考えに至りました。この「読者調査=ドクチョー」という光文社が連綿と紡いできたカルチャーに近いコアバリューを、より世の中が求めている形に広げることで、新たな収益の軸にできるのではないか、と考え「ドクチョー総研」のコンセプトを原さんと議論しながら考えてきました。私はこの事業はやらない理由がないと思いますし、これからの勝ち筋になっていくと信じてやっています。

出版社のマーケティングはこれまで他社も含めていろいろとおこなわれてきたかと思います。「ドクチョー総研」の新しさはどこにあるのでしょうか?

ほかの出版社では、会員データを取り始めるのがすごく早く、すでに何十万人という会員を抱えているところもあります。ただ、その定量データだけでビジネスをしようとするとなかなかうまくいかない、というような話も聞きました。そのような状況ですが、出版社で定性調査をここまで大事にしてきた歴史が前提としてあり、時代に合わせてアクティブな層の定量調査を掛け合わせるというところは、あまりなかったと記憶しているので、光文社らしい新しさだと思っています。「ドクチョー総研」を始めるにあたって競合をいろいろと探りましたが、出版業界ではないフィールドでも戦おうとしています。私たちも、いま言われるまで「出版社のなかでどう勝つか」だけで考えたことはなかったです。ビジネスが多角化しているいま、もっと広い視野で事業を推進したいですね。

高野

私たちは、光文社との接点が無い、たとえば「VERY」を知らない企業の方に「ドクチョー総研」をきっかけに光文社のこと、光文社の発行しているメディアの力を知ってもらう必要があります。電通が出している「日本の広告費」によると日本の広告費は全体で7.6兆円を超え、ここ3年連続で過去最高を更新しています。そのなかで雑誌メディアの占める割合はデジタル領域を含めても数%しかありません。つまり私たちと接点のないお客さんがもっといるわけで、そこに対してアピールをしていかなければなりません。なので、出版業界の他社ももちろん注視するけれど、そこにとらわれず、業界やジャンルを問わずさまざまなところを参考にしながら事業を成長させていきたいと思います。

いままでは女性誌が得意としてきた「美容」や「ファッション」のジャンルが多いかと思いますが、今後狙っていく、伸ばしていけるようなジャンルはありますか?

高野

「ライフスタイル商材」と呼んでいる、食品や生活雑貨などの一般消費財、マネー系や旅行関連などのジャンルです。上記に述べた広告費の大半がここにあてはまり、逆に当社媒体的にはあまり接点がつくりにくいジャンルでもあります。もちろんこれまでもお取り組みをした事例はあり、たとえば、「VERY」がブリヂストンサイクル株式会社と共同開発した「HYDEE.Ⅱ」や、味の素株式会社との共同企画として実施した「すぅぷもっちー」などは読者の声から商品開発をおこなったり、プロモーションをおこなった事例で、「ドクチョー総研」としてこうした事例をより広くつくっていくことがまずは収益化のひとつの形になります。

VERY2023年4月号(撮影/木村敦)

VERY2023年4月号(撮影/木村敦)

VERY2025年3月号(撮影/須藤敬一)

VERY2025年3月号(撮影/須藤敬一)

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出版社の「ビジネス」に必要なものは?

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出版社の「ビジネス」に必要なものは?

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出版社の「ビジネス」に必要なものは?

どういう目線で物事を見ていくことが、出版社でビジネスをするうえで役に立ちますか?

「こうだったらいいのに」という希望や課題感から仮説を立てていくという姿勢だと思います。その仮説の答え合わせは、読調で気づかされることもあれば、データを取ることでできることもあるので、まず仮説を立てられることが大切。世の中のことにアンテナを張って、「これはもっとこうだったらいいのに」「僕だったらこうするのに」ということを、楽しみながら考えないといけない。定性・定量のどちらの調査にも言えることですが、ある程度の仮説があるからこそ、より深いインサイトやその先の課題を解決する商品開発やワーディングにつながっていくと思っています。

髙野

原さんの話にも重なりますが、「広い視野と視座」だと思います。ご存じのとおり、いま世の中は大きく変わっていますし、その変化は今後加速度的に大きくなっていきます。出版社(業界)にいるからと自分たちの領域だけを見ていると置いていかれます。広くアンテナを広げて、そこに自分たちの持っているものがどのような価値として提供できるかを考え抜くことが重要だと思います。あと、スピード感も大切ですね。同時に、メディアで働くということは、世の中に何かしらのポジティブな影響を与えられるかもしれません。稼ぎながら、広く社会に貢献できるのは素敵なことですよね!「世の中をよくする」というと大きな話になりますが、ここにモチベーションを持ってもらいたいです。

雑誌ブランドを使ったビジネスを志望してくださる方もいらっしゃいますが、「雑誌に根差した考え方をするということ」はマストですか?

光文社の雑誌は読者調査から生まれるインサイト発見を軸に、いちばん伝わる言葉といちばんそのメッセージが伝わるツールを都度選んで、コンテンツを届けています。そういう意味では、雑誌の編集者=マーケターであるので、光文社の雑誌に根差した考え方は雑誌づくりのみならず、いろいろな仕事で必要とされる能力だとも言えます。身近な事象や人の行動に対して、一歩引いて考えてみたり、自分なりの仮説を立てられることが大切かなと思います。
また、光文社が一般的なマーケティング会社やコンサル会社などと違うところは、出口として自社のメディアを持っているところなので、そこを最大限に生かす必要があります。

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就活生の皆さまへのメッセージ

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就活生の皆さまへのメッセージ

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就活生の皆さまへのメッセージ

最後に、出版社での編集以外の仕事に興味を持ってくださっている皆さまに向けて、メッセージをいただけますか。

髙野

いまの学生は、私が就活をした20年くらい前よりもすごく多くの情報に触れる機会があり、自分の人生やキャリアを逆算して考える人もいると思います。そういう方にあえてお伝えしたいのですが、たとえばメディアとか出版社はいま厳しい状況にあるといわれることもあり、実際間違ってはいない面もあります。ただ、だからこそチャンスもあると自分は思ってますし、数年でゲームチェンジが起こり得るとも思います。出版社の今の状況だけを見るのではなくて、何をやっているか、やろうとしているのか、そして何が強いのかというところに、目を向けてもらえると嬉しいです。出版社は、コンテンツ・事業・マーケティングといろいろなことができる。このなかで何が勝ち筋か、一緒に見つけていきたいです。

光文社であれば、本や雑誌が好きと同じくらい、人に興味がある人がうまくいく気がしています。女性月刊誌では、モデルや服を見せるだけでなく、その雑誌が発信するライフスタイルや世界観を体現する方にオファーをすることが多かったり、読者の方に誌面やWebで活躍していただくことも昔からよくあるのが光文社の特徴です。人間観察が好きだったり、表から見たものをちょっと裏から覗きたくなったりする人が向いていると思います。「ドクチョー総研」も同じです。そもそも人に興味があって、そのうえでマーケティングにも興味もある人に、楽しみながら働いてもらえれば嬉しいです。

撮影/白倉利恵 構成/人事総務部 ※役職名や固有名詞は2026年2月時点のものになります