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旅立ちぬ
吉原裏同心抄【一】

佐伯泰英/著
光文社文庫

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吉原裏同心抄【二】
浅き夢みし

特設ページ

あらすじ

札差の隠居、伊勢亀半右衛門の遺言により、吉原最高位の花魁、薄墨大夫は落籍され、市井を生きる「加門麻」に戻った。麻は幹次郎と汀女の「柘榴の家」に身を寄せる。
幼い頃、母と訪ねた鎌倉の記憶が甦った麻は鎌倉を訪ねてみたいと願い、汀女と幹次郎は同道をすることに。
汀女、麻、幹次郎。揺れ動く三人の運命は、鎌倉へ向かう旅に委ねられる——。

当時の流行発信地“吉原”で活躍する魅力溢れる女性たち

「わずか7万平米足らずの敷地内に、ひとつの特殊な社会が存在していた吉原。さまざまな問題のあった場所ですが、ファッションや文化の流行発信地でもあり、僕が書いている“吉原”はある種、理想郷のようなものなんですよ」

佐伯泰英さんが書く「吉原裏同心」シリーズは、同心として吉原を守る主人公のほか、夫を支えながら働く妻たちや、確たるプライドを持つ花魁など、魅力的な女性が登場する。

「彼女たちが魅力的に見えるとしたら、いろんな運命を背負って流れ着いた吉原という地で『生きていくためには何をすればいいか』を考え、行動しているからかもしれないですね。近ごろはよく『何をやっていいかわからない』と言うけど、何事も動いてみないとわからないですよ。動いたところで壁にぶつかる。そこで、避けるのか、進むのか、何をするのか……こうしているうちに、何か出てくるんじゃないでしょうか。一歩踏み出せば、また違った風が吹いてくると思いますし、僕の時代小説もそんなものです(笑)」

現代は不安が大きくしんどい。江戸時代の“理想郷”に物語を託している部分もあるという。

「いまの社会にないものを書いているだけかもしれないですね。自分のことより、夫を助けるには何をすればいいか考える妻とか……いや、それは今もいるよね(笑)。でも、少なくなっているかな。自分たちのいる場で人のために動ける人は魅力的だし、そういう人が増えたら、世の中は変わっていくんじゃないかな」

佐伯さんの書く時代小説には、本当の悪人が出てこない。「ほっとする」何かを求めて、仕事や人間関係に疲れている読者も多くいるようだ。

「仕事や家事など、何かの合間に読んでくださる方が多いようで、『こういう世界もあるんだ』『こんな生き方もあるんだ』というような手紙もいただきます。それは、いまの社会が苦しいからですよね。心地いい社会になったら、僕の作品も、怖いものに変わっていくかもしれませんが(笑)」

シリーズスタートから14年。ひとつの区切りを経て新たな章がはじまる。

「『吉原裏同心』シリーズの25巻『流鶯』を書き終えたときに、ひとつの終わりが見えました。でも、そこから新しい視点で26冊目を書いてみようと、とくに女性の方に『時代小説って何だろう?』と手に取っていただけるものに挑戦しています。時代小説だからと難しく考えず、そのまま読んでいただけたらうれしいです」

撮影/小林愛香 取材・文/金子弥生

旅立ちぬ 登場人物

  • 豊後岡藩の馬廻り役だったが、幼馴染で納戸頭の妻になった汀女とともに逐電の後、江戸へ。吉原会所の頭取・七代目四郎兵衛と出会い、剣の腕と人柄を見込まれ、「吉原裏同心」となる。示現流と眼志流居合の遣い手。
  • 幹次郎の三歳年上の妻女。豊後岡藩の納戸頭との理不尽な結婚に苦しんでいたが、幹次郎と逐電、長い流浪の末、吉原へ流れ着く。遊女たちの手習いの師匠を務め、また浅草の料理茶屋「山口巴屋」の商いを任されている。
  • 元は薄墨太夫として吉原で人気絶頂の花魁だった。吉原炎上の際に幹次郎に助け出され、その後、幹次郎のことを思い続けている。幹次郎の妻・汀女とは姉妹のように親しく、伊勢亀半右衛門の遺言で落籍された後、幹次郎と汀女の「柘榴の家」に身を寄せる。
  • 吉原会所七代目頭取。吉原の奉行ともいうべき存在で、江戸幕府の許しを得た「御免色里」を司っている。幹次郎の剣の腕と人柄を見込んで「吉原裏同心」に抜擢した。
  • 吉原会所の番方。七代目頭取・四郎兵衛の右腕であり、幹次郎の信頼する友でもある。
  • 引手茶屋「山口巴屋」の女将。吉原会所七代目頭取・四郎兵衛の実の娘。
  • 南町奉行所隠密廻り同心。吉原にある面番所に詰めている。
  • 南町奉行所定廻り同心。これまで幹次郎とともに数々の事件を解決してきた。
  • 南亡き父と四郎兵衛との縁を頼り、吉原にやってきた。吉原会所の若き女裏同心。

旅立ちぬ 地図

  • 「吉原裏同心」シリーズの舞台である遊郭・新吉原は、「吉原裏同心抄」でも引き続き舞台となる。

  • 麻たち三人は、江戸の北東に位置する吉原の近くから、大川を舟で品川宿に向かい、はるか鎌倉への旅に出る。

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