ドストエフスキー『アクリョウ』ノショウゲキ
2012年4月17日発売
定価:968円(税込み)
ISBN 978-4-334-03682-9
光文社新書
判型:新書判ソフト
ドストエフスキー『悪霊』の衝撃
興味深いことに、ドストエフスキーは、スタヴローギンの運命をはじめから決めておいた。それは、縊死というもっとも醜い死であり、そのような運命の選択にみちびくことに、作家はいささかの迷いもなかったといってよい。にもかかわらず、ドストエフスキーは、「偉大な罪人」として、なおかつ彼に試練の道を与えた。これは裏切りではないだろうか。何のための試練だったというのか。
(亀山郁夫エッセイ・本文より抜粋)
内ゲバ殺人、少女凌辱、火事、大量死……ドストエフスキー最大の問題作『悪霊』。作家はなぜ「自分の魂から取り出してきた」と書いたのか――善と悪の基準を失い罪を背負う主人公スタヴローギンをめぐり、日本語新訳の訳者と、ロシアにおける研究の第一人者が、ドストエフスキーと小説の「魂」に迫る。世界文学最大の問題作に潜む謎を解く対談&エッセイ。
目次
プロローグ――『悪霊』幻想 亀山郁夫
第1部 ダイアローグ――2011年1月23日の記録
第2部 質問と回答
エッセイ アイスランドのスタヴローギン リュドミラ・サラスキナ
エッセイ アウラを求めて 亀山郁夫
著者紹介
亀山郁夫(かめやまいくお)
一九四九年生まれ。東京外国語大学学長。著書に『「カラマーゾフの兄弟」続編を空想する』(光文社新書)、『甦るフレーブニコフ』(平凡社ライブラリー)、『ドストエフスキー:共苦する力』(東京外国語大学出版会)、『磔のロシア』(岩波現代文庫)など多数、訳書に『カラマーゾフの兄弟』(全5巻)、『罪と罰』(全3巻)、『悪霊』(全3巻+別巻。以上、光文社古典新訳文庫)など。
リュドミラ・サラスキナ
一九四七年生まれ。ロシア国立芸術学研究所主任研究員。ソルジェニーツィン、ドストエフスキーなどのロシア文学を精力的に研究。著書に『ドストエフスキーの恋人:アポリナリヤ・スースロワ』、『フョードル・ドストエフスキー:悪魔の克服』、『ソルジェニーツィン』、『偉人伝叢書ドストエフスキー』など多数(すべてロシア語、モスクワでの出版)。